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歌舞伎フォーラム公演 『櫓のお七』 『増補 菅原伝授手習鑑 松王下屋敷』 [歌舞伎]

◆◆◆ 歌舞伎フォーラム公演 ◆◆◆

2005年9月17日(土) 16:30開演の部
江戸東京博物館 1階ホール

・ 歌舞伎の美 『効果音』
・ 歌舞伎舞踊 『伊達娘恋緋鹿子 櫓のお七』
・ 歌舞伎    『増補 菅原伝授手習鑑 松王下屋敷』

出演 中村京妙 中村又之助 澤村光紀 中村梅之 

*****

花組日生劇場公演で今月のカンゲキ予定は終わり、
10月はほとんど毎週旅に出るので、11月まで苦悶の日々かと思いきや、
さっそく両国へ足を伸ばしました。

今回のは、弟子筋に当たる若い歌舞伎役者さんによる公演。
歌舞伎座などの専用劇場ではないので、どんな公演になるのか
興味半分、不安半分。

隅田川を渡り、大相撲真っ最中の両国へ。
国技館の隣にどどーんと建っている、奇抜な建物が江戸東京博物館です。
駅前で便利は良いけれど、建物の構造自体がとてもやっかいそう…。

博物館のホールというのが、これまた予想以上に奇抜な設計。
多目的ホールですから、花道がないのは仕方ないとしても、
(当日は下手通路に板を渡し、ささやかすぎる仮花道を作っていました)
ホール上部の照明(しゃ、シャンデリア…?)があまりにも奇怪。

何か、劇場上部全面が、玉虫色の花弁を持つ巨大な食中花に
覆われているような感じなんです(笑)。
舞台に集中している間に、気が付いたら飲み込まれてるんじゃ…
と心配するほどに怪しげな空気を醸し出しておりました(笑)。

そんな感じで(どんな感じだ)始まった歌舞伎フォーラム公演。
第1部は簡単なレクチャーで始まります。司会は又之助さん。
丁寧な解説でした。

雨の音や雷の音など、どうやって歌舞伎の効果音を出しているのか、
実際に数名の観客代表を舞台に上げて実演。

「へぇ、あの音はあんな風に出しているのか!!」
と素直な驚きもあり、興味深く拝見。最後はその観客さん代表の
効果音で、梅之さんがちょっとした舞踊を見せるという試みもあり、
めったに経験できないコラボレーションに、客席も大いに沸いていました。

*****

それでは、舞台へ参りましょう。

●●● 伊達娘恋緋鹿子 櫓のお七 ●●●

【物語】

八百屋の娘、お七(京妙)は吉祥院の寺小姓、
吉三郎と恋仲。吉三郎はある名剣を探索しているのですが、
ある晩、お七はそのありかを突き止めます。

その夜が明ければ、吉三郎は名剣紛失の責をとって
切腹しなくてはなりません。お七はどうにかして名剣の
ありかを伝えたいのですが、あいにくとその夜は大雪。
しかも既に、町中の木戸は閉まってしまいました。

何としても吉三郎に逢いたいお七の目に入ったのは、
火の見櫓の太鼓。これを打ち鳴らせば町中の木戸は開きます。
しかし、火事の報せ以外にこの櫓の太鼓を打つことは
固く禁じられており、その掟を破れば死罪は免れません。

ひたすら吉三郎恋し、のお七にとって、
そんな掟など意味を持ちません。
死にものぐるいで櫓に駆け上がったお七は、
一心不乱に火の見櫓の太鼓を打ち鳴らすのでした。

【カンゲキレポ】

『櫓のお七』は通常、「人形振り」という歌舞伎独自の演出方法で
上演されることがほとんどですが、今回も人形振りでの上演。

口黒衣の人形遣いがその役者をまるで、文楽人形を操っているかのような
動きを見せ、役者は、人形遣いに操られているように、
つまり、人形のような動きを見せる演出方法です。

「人形振り」が用いられるのは、若い女性の役について多いですね。
『金閣寺』の雪姫、『奥庭』の八重垣姫、『妹背山』のお三輪、そして今回のお七。
今思いつくだけでも、これだけの役が挙げられます。

この役どころの共通点は、「狂おしいほどの恋に我を忘れている」という事。
恋しい人を想うあまりに、通常ではあり得ないパワーを発揮してしまう、
という点にあります。

いわば、黒衣(=人形遣い)は、その役(娘)の内面に秘められた
「自分では制御のしようがない感情」を象徴しており、
それによって操られる娘は、その制御の効かない感情に
突き動かされるままに行動してしまう娘の一途さ、激しさを
象徴的に表現しているのだと思います。

***

今回は、京妙によるお七。
85才を迎えてなお現役の女形・中村雀右衛門のお弟子さんです。
ちょっと幸薄そうな風情の漂う可憐な姿は、師匠譲りでしょうか。

人形振りが始まる前半までは、非常に良かったです。
世間知らずの大店のお嬢さん、といった空気を漂わせながら、
話題が吉三郎の事になると、パッと周囲が桃色に変わるような
恥じらい、恋する乙女の風情が出て、愛らしいお七でした。

意外に期待が外れてしまったのが、後半の人形振り。
又之助、光紀による人形遣いだったのですが、どうも呼吸が合っていない。
人形遣いの動きと京妙の動きが微妙にずれて、その微妙なズレが
積み重なっていき、結果的にはそのズレが目立ったまま終わってしまいました。

2年前に南座で観た『松竹梅湯島掛額』で、尾上菊之助がお七を
人形振りで見せたのですが、その時はもう、終わった後も一時は
席を立てないほどの感動を受けました。
その時の感動が私の中で先入観にあったのは事実だと思いますが、
人形振りの難しさ、苦労が伝わってくる舞台でした。

●●● 増補 菅原伝授手習鑑 松王下屋敷 ●●●

三大名作のひとつ、『菅原伝授手習鑑』の中でも、ひときわ上演回数の多い
『寺子屋』。歌舞伎座でも、少なくとも年に1度はかかります。
その前日談ともいえる形で補筆されたのが、この『松王下屋敷』。

なお、『菅原伝授手習鑑』についてはコチラのURLにて
楽しくお勉強できます。→ http://www2.ntj.jac.go.jp/dglib/exp2/w/001.html

【物語】

時は平安時代。天下乗っ取りを企む藤原時平(「しへい」と読みます)の
讒言によって、菅丞相(かんしょうじょう=菅原道真)は太宰府に流刑と
なります。

菅丞相の妻子はどうにかして難を逃れ、一人息子である菅秀才は、
丞相のかつての弟子、武部源蔵が密かに預かり、自身が営む寺子屋で
匿っていました(→これが『寺子屋』につながります)。

かつて菅丞相に恩義を受けながらも、世情のしがらみによって
時平側に仕えざるを得ない状況にある松王丸(又之助)。
ある晩、彼の住む屋敷に、時平の所から使者が来ます。

聞けば、菅秀才の居所が判明し、その首を打つことになったが、
時平方の人間は全員、菅秀才の顔を知りません。
そこで、菅丞相とつながりのある松王丸が、菅秀才の首実検役を
命じられたのです。
(「首実検」=実際に討たれた首を見て、本人かどうか確認する事)。

松王丸は、今こそ菅丞相の恩に報いる機会だと感じ、
自分の息子である小太郎を、菅秀才の身替わりに立てる事を決意します。
そして、妻である千代(京妙)の胸中を計ろうと、ある一策を講じます…。

【カンゲキレポ】

今回の出演者は、子役を除くと上記の4人。
それを考慮すると、見応えのある舞台だったと思います。
いわゆる御曹司ではない、弟子筋の役者さんたちによる
舞台であったとはいえ、なかなか良かったな~、と。

『寺子屋』のあらすじを知っていたり、一度観ていると、
「にっこり笑って首差し出して」など、『寺子屋』に続く台詞などもあり、
松王丸一家の悲劇が一層色濃く浮かび上がってきます。
それを差し引いても、松王丸と千代の苦悩が真っ直ぐ伝わってくる舞台でした。

一緒についてきた職場の同僚は、これが歌舞伎初体験でしたが、
(友人の初歌舞伎にコレを選んだ私も、かなりチャレンジャーだな>笑)
「いやぁ、時代が時代とは言え、哀しい…」
と、深くため息をついていました。

***

さて、公演終了後はバックステージツアーがあるということで、勿論参加。
松王下屋敷の場の舞台装置をバラシていきながら、色々な説明をしてくださいます。
(気が付けばお客さんもバラシを手伝っています>笑)

私は、『櫓のお七』で使用した火の見櫓に実際に上らせてもらいました!!
係の人に図々しくもお願いして、携帯で写真を撮ってもらったのですが、
普通じゃないはしゃぎっぷりで写ってます(笑)。

*****

今回のような、いわゆる幹部役者さんや花形役者ではなく、
弟子筋の若い役者さんだけによる勉強会に近い感じの公演を
拝見したのは初めてですが、強く思ったことが1つだけあります。

「このような公演を、歌舞伎座で行うべきだ」と言うこと。

まずは、日程的な問題が一番でしょう。
歌舞伎座は1年を通じて、毎月25日間運営してます。

しかし、弟子筋さんの研鑽の場でもあるこのような公演こそ、
歌舞伎座でも行うべきだと思うのです。

今回のフォーラム公演は、約1ヶ月間の興行。
花道も満足に組めないような舞台では、あまりにも役者さん達が気の毒。

もちろん、大変失礼ですが、弟子筋の若い役者さん達が
歌舞伎座で勉強会をする事によって、満席になるとは思っていません。

ただ、若い役者さん、弟子筋の役者さん達にとって、
どんな公演でも主役を演じると言うことは、めったにできない機会です。

歌舞伎のホームグラウンドである「歌舞伎座」の舞台で
真ん中に立つことによって、その役柄に挑戦するだけでなく、
普段なかなか経験出来ない、舞台の真ん中から見える景色を体感し、
そして「歌舞伎座」という劇場全体の空間を埋めることの難しさ、
大変さを実感すればこそ、「歌舞伎役者」として、非常に貴重な機会になると
思うのです。

役者さん達の熱演を感じれば感じるほどに、強く感じました。

*****

歌舞伎座での公演は、まぁ難しいとは思いますが…。
(これだけ熱弁をふるっておきながら、あっさり諦め気味>苦笑)
せめて、せめて花道がちゃんと設営できる劇場での公演を~っ!!(切実)

今日のお星様…★★★☆☆ (永山会長、ご一考をっっ!!>笑)


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