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『ラスト・タイクーン』 感想(2) [宝塚歌劇]


感想(1)はコチラから。


悲劇的な事故で妻である女優のミナ・デービス(蘭乃はな)を喪ってから3年。かつてはハリウッドのタイクーンと賞された映画プロデューサー、モンロー・スター(蘭寿とむ)を取り巻く状況も、少しずつ変化が訪れようとしています。

モンローのオフィスには、亡き妻ミナのスチール写真が今でも飾られています。この写真が後半、モンローの地位を大きく揺るがすきっかけとなります。

そこへ、脚本を書かせるために英国から招聘した小説家ボックスレー(華形みつる)と脚本家のワイリー(芹香斗亜)、ジェーン(遼かぐら)がすごい勢いで入ってきます。ボックスレーとワイリーは、モンローのユニットのやり方に不満がある様子。どうやらモンローは、ひとつの作品を作るにあたり、3人の脚本家を競わせているようです。

「それが僕のユニットのやり方です」とモンローはボックスレーに人差し指を突き出して言うのですが、この時にジェーンもモンローの真似をしているのが密かなツボ。ジェーンを演じた遼かぐらは台詞こそ少ないものの、どんな時でも完全にジェーンとして舞台に立っていたのが印象的でした。

秘書ケイティ(桜一花)との何気ないやり取りの数々が、この芝居でいちばん好きでした。朝日の射しこむオフィスでの会話も好きです。

モンロー「なんで僕は映画を作り続けているんだ、辛い事ばかりなのに」

ケイティ「らしくありませんわ、弱音を吐くなんて」

モンロー「弱音じゃないよ、本音だよ」

ケイティ「(少し笑って)既に皆さん、お待ちになっています」

ここのやり取りが、本当に職業人、企業人としての自然さが出ていて、それでいて2人の関係性がよく表現された秀逸な場面だと思います。

それから、ボックスレーとワイリーの予定外の訪問に対応するモンローの後ろでさりげなく時計を気にしたケイティが、タイミングを見計らって「お時間が」とモンローに進言し、それにモンローが「ん」と応えるところも素敵。

「お時間が」と切り出すケイティのタイミング、作らない声で「ん」と応えるモンロー。芝居の枠にきっちりとはまっていながら、本当にナチュラルなんですよ~!

いっくん(生田大和先生)、こんなにいっぱいとむいちかを見せてくれて、ありがとう……!

モンローは映画撮影を見たことがないというボックスレーを、撮影スタジオへ案内します。



撮影所の8番スタジオでは、モンローが製作を手掛ける映画「椿姫」の撮影真っ最中。その様子が、カメラマン・アイザック(柚香光)、監督のライディングウッド(紫峰七海)、音声係のディック(水美舞斗)など若手を中心にダンスと歌で繰り広げられます。

ヒロイン・ヴィオレットを演じるのは、ヴィヴィアン(華耀きらり)。純白の豪華なドレスが、よく似合う!

相手役のアルフレード役を演じるのは、早くも二役目の鳳真由。ちょっとオネエ系な感じにキャラを作り上げていて、アルフレードを熱演しすぎて、きらりに「あつっくるしい!」と怒鳴りつけられているのがツボです(笑)。

このナンバーでは、映画制作の期限が迫っていること、小道具や衣装の予算が足りないこと、監督のライディングウッドが苛立っていて「スタジオが危機に瀕している」事が歌われます。

この曲中で、撮影ユニットのトップであるプロデューサーの指示は絶対であること、会社からの締め付けが厳しいこと、それらに耐え、時にかわしながらも良い作品を作ろうと意気込む映画技術者たちの情熱とプライドを、きちんと歌詞に盛り込むべきだったと思います。それらをひっくるめて、ひたすら「映画バカ、映画バカ♪」を連呼するだけでは伝わりません。

でも、ライディングウッドが「泣け!笑え!ライトを当てろ!」と歌う時に、センターにいる華耀と鳳がいちいちオーバーな表情演技をしているのが面白いです!「風を起こせ!」では華耀のドレスの裾を鳳がパタパタさせて、華耀がマリリン・モンローのポーズをするのが、めっちゃ可愛い☆

バタバタしているスタジオに、モンローがボックスレーを連れて出てきます。そしてこれまでの撮影分の出来を散々こきおろし、重要な小道具を外したライディングウッドを問い詰めます。

そこで重厚な音楽とともに登場するのが、モンローを敵対視するブレーディ(明日海りお)。うわ~、この登場の仕方、『ベルばら』でよく観る~!(笑)でも舞台奥から堂々と登場する演出が、ブレーディのふてぶてしい感じがよく出てる!

ブレーディは自分の秘書ローズマリー(芽吹幸奈)と会社の顧問弁護士フライシェーカー(瀬戸かずや)を引き連れています。うわー、上司も上司なら部下も部下だわー!めっちゃふてぶてしい顔してるわー!(笑)

ライディングウッドが、自分が所属するユニットの責任者であるモンローに相談もせずに小道具をカットしたのは、モンローよりも高い地位にあるブレーディからそのような指示を出されたためでした。

作りたい映画のためには全てを賭ける、その心構えで映画を作ってきたモンローと、あくまでもビジネスを割り切り、予算内での映画制作を主張するブレーディ。ここでも両者の立場は平行線です。

明日海は低くて良い声をしています。「おいモンロー、喧嘩をしに来たわけじゃないぞ」という言い方が、とても好きです。

モンローとブレーディが火花を散らしている間、秘書たちの間でも静かな葛藤が繰り広げられています。険しい視線でケイティを一瞥するローズマリー。その視線を受けつつ、秘書としての立場をわきまえてローズマリーに並んで立つケイティ。お互いに顔を見合わせることはないけれど、それぞれの上司を見守り、いざとなればサポートしようとする緊張感に漲っています。

ブレーディが去った後、モンローはその場でライディングウッドを自分のユニットから外します。

実は私が観劇したある日、蘭寿さんが珍しく台詞に詰まりましてね~。「レッド、これ以上撮らせるわけにはいかない、出て行ってもらう」というせりふだったのですが・・・

モンロー「…………」←ちょっと目が泳ぐ蘭寿さん

レッドほか「…………」←明らかにドキドキ

モンロー「……うぉいっ…」

レッド「はいっ」←思わず返事しちゃった(笑)

モンロー「……っもう…」

レッド「はいっ」←また返事しちゃった

モンロー「……おまえにまかせられないクビだーっっ!!」←珍しく棒読み

とにかく、詰まった台詞を思い出そうとしながら、それに近い言葉を繰り出さないと!って焦ったんでしょうね。近年まれにみる早口でした(笑)。

そんな蘭寿さんが…かわゆす…☆(*´艸`*)


突然の監督交代に、現場は騒然となります。そこに異を唱えたのが、撮影所スタッフのブロンソン(望海風斗)。えーと、彼は撮影所で何の仕事をしているのかは具体的には書かれていないのですが、おそらくユニットよりは比較的自由度の高い部署に勤務しているのかな、と思っています。…経理部とか?(←思いついただけ)

観客を満足させる映画を作るために最も大切なのはユニットの結束だと信じているモンロー。その結束を乱すような事をライディングウッドはしてしまったのですから、モンローにしてみれば当然の措置です。

しかし、3年とは言え時間は経過し、時代は移り変わっています。現場スタッフたちには労働者としての意識が強くなり、立場が上の者からの強引な手腕は不満を募らせる原因にもなります。

「俺が結束だ」。毅然と―現場スタッフには傲然と、に見えたでしょう―言い放って、スタジオを立ち去って行くモンロー。この時の横顔が、どこか頑なで…。まるでミナがいた時と同じようにふるまうことで、自分をその頃の時間軸に留めようと無意識にしているのかも知れない、そんな風にも感じました。

立ち去る時に、歩きながらさりげなくネクタイに手をやる仕草がとってもカッコイイのです!私はいつも、オペラでガン見です(笑)。

モンローの有無を言わせない強権的な対応は、当時「強硬手段(スチームローラー)」と名付けられ、労働者たちの不満の原因ともなっていました。それを目の当たりにした現場スタッフたちは、ついに怒りを噴出させ、ブロンソンの指揮のもと、ユニオン(労働組合)を結成する方向へ向かい始めます。

ここも望海を中心とする若手がメインの場面。迫力のあるコーラスと踊りは、事態が不穏な方向へ向かいつつあることを予感させます。

この場面で目立つのは、柚香光。リフトされた望海が「俺たちは奴隷じゃないと叫ぶんだ」と歌うその前で、腕をガクガクと二段階に分けてアクセントをつける振りがあるのですが、それを見るたびに、「あ、Angel Blackだ~、久しぶりだね~」と思ってしまう自分がいます(笑)。

※Angel Black・・・前回公演『愛と革命の詩(うた)―アンドレア・シェニエ―』にて、ゆずかれーくんが演じた役





モンローに対して若きスタッフたちの反感が募っていくのを、ブレーディたちが黙って見ているわけがありません。これを機に、彼はモンローを潰そうと画策を始めます。

下手花道でブレーディ、ローズマリー、フライシェーカーの3人が話すのですが、またここがわっるい会話でね~。ていうか、ブレーディをたきつけているローズマリーとフライシェーカーが、実はこの物語でいちばん悪人コンビだと思います。極悪スカイ・ナビゲーターズコンビ(笑)。←スカイ・ナビゲーターズについてはコチラへ☆

瀬戸かずや@フライシェーカーの「モンローを追放すれば、実権はあなたのものだ」という言い方、明らかに顧問弁護士としての範疇を越えていますからね(笑)。でも声が良いからうっとりと聴いてしまうのですよね~。あきら君、ええ声してはるわ~☆

そして、芽吹幸奈@ローズマリーの「会社での立場は貴方が上です」の言い方とか。くみちゃん(芽吹)、ブロンドの髪に切れ長の瞳がいかにもアメリカンなデキる秘書という感じで、ちょっと…踏まれたい…(←謎の性癖露見)。

そこへ、ブレーディの娘で大学生のセシリア(桜咲彩花)が帰省し、彼のもうひとりの秘書バーディ(華雅りりか)に伴われてやってきます。「お嬢様が帰っていらっしゃいました」という華雅の落ち着いた声で、それまで真っ黒な空気がどよどよしていた(笑)3人の雰囲気がちょっと明るくなるのもツボです。何ていうか、無理やり明るくしてみた感が(笑)。

ツボと言えば、ついさっきまでどす黒い表情と無駄にイケメンボイスな瀬戸@フライシェーカーの表情がやたら好青年風に一変するのがツボです!

さっきまで眼光鋭く「モンローを追放すれば……」とか言ってたくせに、セシリアに「お久しぶりです」と言う時には、やたら好青年な爽やかさを装った笑顔なの!でも、隠しきれない胡散臭さが漂っているの!(笑)

そんな、わかりやすく重役のお嬢さんに取り入ろうとしている(笑)フライシェーカーを、さりげなく制止するローズマリーがまたグッジョブです。セシリアにモンローの居場所を聞かれて「まだオフィスにおられるかと」と答える時の、ちょっとわざとらしく高く作った声とか、張り付いた笑顔とか。流石、90期!

大学で労働問題について勉強を始めたというセシリア。モンローに恋している彼女は、さっそく彼のオフィスを訪ねることに。「親の心子知らずだな…」とため息交じりに言う明日海の声、巧いです。そして、その横顔をチラリと見やるバーディの表情も。





モンローのオフィスでは、モンローがパラマウント社に勤める知人に電話をしています。

「優秀な奴だよ。監督としては…ね。」と話しているのは、先ほど自分のユニットから下ろしたライディングウッドの件。

ここで、モンローはただ自分の意に添わなかったユニットの人間をただ切るだけでなく、彼なりの方法でアフターフォローをしていたことを観客は知ります。けれどそれを知っているのは、観客と居合わせたボックスレーだけ。

いつも感心するのですが、蘭寿は「記号の演技」が完璧にできる人なのですよね。

上述の台詞、「監督しては…ね。」の「…」とか。「…」や「、」の中に込められた感情を芝居に難なく乗せることが出来るのです。今回はこの蘭寿の記号の演技をたくさん見ることができて、嬉しかったな。

小説家のボックスレーには、なぜ自分が脚本家として呼ばれたのかわかりません。そんなボックスレーに、モンローは「ストーヴの女」の話を始めます。原作本にも登場するエピソードです。

モンローとボックスレーの想像の中で「ストーヴの女」を演じるのは、乙羽映見(おとはねえみ)。

たった数分の出番ですが、ブロンドの鬘を何パターンか作っているようで、ある時はシニヨン、ある時はハーフアップなど、観るたびに楽しませくれました。素晴らしい娘役魂!「黒い手袋など、持ったことは一度もありません」という言い方も、しっとりと落ち着きがあって、それでていてミステリアスな色香を感じさせて秀逸でした。

「ある種の情景は想像力に訴えかける。だが、過剰な会話は想像力を固定する。」モンローのこの台詞、とても好きです。最近のお芝居は、台詞の量が多くて、観客に想像させる余地を奪っているような気が…でもそれは、観客が想像することをせず、わかりやすい芝居を求める傾向が強くなってきたからかも知れませんが…。

そこへ、先ほどのセシリアとブレーディ一行がやってきます。「今は娘のお守りだ」と言う明日海の言い方が、妻に早く先立たれ(と勝手に思っているのですが)、年頃の娘をどう扱っていいのか困り果てている様子が伝わってきて、束の間ほっこりします。みりおパパ、かわゆす♪

そこから突然、事態は急変。撮影所で火災が発生したとの知らせが飛び込んできます。オフィスを飛び出していく男性陣に合わせて盆セリが周り、撮影所のセットへ転換します。

この時、どうしても火災を表現する歌やダンス、赤い照明、スタジオの階段セットを昇り降りする蘭寿や明日海などに目を奪われますが、盆セリが回り切るギリギリまで演技を続けている「チーム秘書」(芽吹@ローズマリー、桜@ケイティ、華雅@バーディ)の動きにもぜひご注目ください。

この3人の中ではローズマリーが年長らしく、基本的には彼女が2人の秘書に指示を出します。ケイティには電話をするように、バーディは重役令嬢であるセシリアのフォローをするように、台詞無しで動作だけで指示するローズマリー。

モンローの机に置いてある電話を素早く取り上げ、受話器の向こうの相手に懸命に、冷静に、何事かを伝えるケイティと、その成り行きを見守るローズマリー。少し離れたところで、セシリアの肩から手を離さずじっと待機するバーディ。

やがてケイティの電話が終わると、さっと3人が円陣を作ります。ケイティが電話内容を伝えた後、3人それぞれの今後の対応と業務の役割分担を全員で確認してからお互いに頷き合い、セシリアを伴って移動する(=袖に入る)。

この3人の演技を見ていると、こんな風に、誇りと責任感を持って働いている彼女たちがいるからこそ、モンローもブレーディも、安心して自分たちの仕事に集中できるのだなと心の底から納得しました。





振りかかる火の粉を全身使って避ける蘭寿さん@モンローのカッコよさに不謹慎にも悶えているうちに、火災で全焼したのはモンロー製作の「椿姫」を撮影しているスタジオだという事が判明します。「8番スタジオ、全焼です!」と言われた時の蘭寿@モンローのわずかに歪む表情、注目です。

現場に到着し、「まだ使えそうな物をまとめろ」と言いながらダブルスーツの上着を脱ぐ蘭寿さんが超絶(メガ)男前です(私情)。

モンローに反感を持っているアイザック(柚香)は「指図すんじゃねえ」と食ってかかりますが、モンローに「今は揉めている場合じゃないだろ」と一蹴されて「クソッ」と憤っているのですが…そう言われて当然じゃね?モンローの言う通りじゃね?(←脚本の問題)

この時に、顔色ひとつ変えずに「被害総額を計算しろ」と指示を出すブレーディと、その指示を淡々と受け入れるフライシェーカーも印象的です。2人とも、ある意味でまともな企業人なのですよね。

そしてここで、モンローにとって衝撃の出会いが訪れます。

スタジオ倉庫の片隅に、撮影所のスタッフではない女性がいた、という報告を受けるモンローは苛立った声で「連れてこい」と命じます。スタジオの階段に現れた女性を何気なく見て、モンローは硬直します。

ミナ―ではなく、ミナに生き写しの女性、キャサリン(蘭乃)が、そこに佇んでいたのです。

このシーンは原作でもドラマチックに描かれていましたが、舞台でも印象的な演出がされていました。

スタジオのセットの、下手寄りの階段から下りてくる女性を、モンローは上手前から見上げる形になります。

2人の視線がぶつかった瞬間、ドラマチックな音楽とともに真っ白のサイドライトが女性の顔を照らし出します。一方、モンローは真上からサスライトで照らされます。まるで、天からの啓示のように。周囲の人物も、ストップモーションとなって、文字通り、モンローの中で「時間が止まった」かのような演出を果たします。

キャサリンはエドナ(仙名彩世)とともに、ほんの出来心で撮影所に来たようでした。

エドナ役の仙名は、たたずまいと言い、大げさな手振り身振りを交えながらちょっと甲高い声で弁解する様子と言い、アメリカのドラマから抜け出てきたかのような存在感です。

結局、キャサリンとエドナは警察に身柄を預けることになるのですが、そうと決まった時に、仙名@エドナが「ハンッ!」とわざとらしく一息ついて去って行くんですね。その「ハンッ!」が、また巧くて巧くて!きっと海外ドラマをたくさん見て研究したのだろうなと思います。

去っていくキャサリンの姿を目で追いながら、「もう一度彼女に会いたい…会って確かめなくては…」と呟くモンローを残して、舞台は溶暗します。

この直後、驚異の瞬発力で上手袖へ全力で走ってはける本気のらんとむダッシュもお見逃しなく!ちょっとだけ前かがみになって、両腕を振らずにぴったり身体の横にくっつけて、上手袖へ全力疾走する姿は、とっても凛々しくてフォームも美しいですよ~!

暗転しても気を緩めることなく、目を凝らして、「袖へはける時も全身全霊な蘭寿さん」をご堪能ください。


***


またもやカーット!!

だ…だめだ…書き上げられる自信がない…orz (←早くも挫折)


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